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採用vol.8

中小企業のための採用戦略 第8回 中小企業の成長と新卒採用の方程式 新鮮な人材が入ることで企業文化が育ち、職場のモチベーションが上がる

採用コンサルタント 寺澤 康介

慶應義塾大学文学部1986年卒。採用プロドットコム株式会社代表取締役社長。約20年間採用コンサルティングに関わり、大企業から中堅・中小企業まで幅広くコンサルティングを行ってきた経験を持つ。これまで新聞(朝日新聞、フジサンケイビジネスアイ)、経済誌(週刊東洋経済)、人事専門誌(労政時報、企業と人材、企業実務)などのメディアに採用・就職関連の記事を連載、寄稿している。

「規模が小さくても成長するためには、新卒採用に取り組まなければだめです」。これは採用コンサルティング企業の営業担当者が経営者に語る決まり文句だ。単なる営業トークではない。成功しているベンチャー企業の経営者も、自社が成長してきた要因として新卒採用による人材確保を上げることが少なくない。

しかし新卒採用に取り組んでいる中小企業は多くない。縁故や中途募集で退職者を細々と補充している程度だろう。わたしの知る限り、こういう企業が成功することはまれだ。いままでの商権を維持することはできるかもしれないが、大きな成長は望めないと思う。

成長には新卒採用が必要だ。今回は中小企業の成長と新卒採用の方程式を解いてみたいと思う。

2011年新卒市場は活況。文理を問わず学生はセミナーを歩き回っている

2011年新卒市場は2009年10月1日の就職ナビのオープンによって始まり、合同企業セミナーはかつてない活況を呈している。今年の特徴は、文系だけでなく理系も積極的に動いていることだ。10月初旬に池袋で開催された理系セミナーは大盛況であり、文理を問わず学生はセミナーを歩き回っている。
学生の就職活動は「就活」あるいは「シューカツ」と呼ばれるが、学生のシューカツ意識は3カ月くらい前倒しで高くなっている。こんなことはこれまでになかった。
ただ、大企業のほとんどはまだ採用計画を確定していないと見られる。計画が固まっても採用数は絞り込まれたままだろう。

そもそも2010年新卒市場も終わっていない。「就職に強い」ことで定評のある東京の私立理系大学でも、10月段階で3割の学生の内定が取れていない。もっとも例年でも未内定学生はこの時期に2割いる。ただ、この1割の差は大きいとわたしは考える。

これは中小企業にとってはチャンスである。優秀学生と出会う確率が高くなっているのだ。
「よし、わが社もいよいよ新卒採用に取り組むか」と考えている中小企業の経営者もいることだろう。確かに時期はいい。しかしこれまで新卒を採用したことがないなら、中途と新卒の違いを理解する必要がある。

中小企業が優秀人材を採用したいなら中途ではなく新卒

人材の優劣という観点から見ると、中途採用より新卒採用の方が優秀人材を確保しやすい。中途の場合、転職者は自分の人材価値をある程度把握している。「自分の経歴と能力なら、これくらいの処遇、これくらいの企業」と判断している。そして、倒産などのやむを得ないケースを除けば、優秀人材は不況期に動かない。
現在の中途市場は人が余っており、募集すると多くの応募者が集まる。しかし、かなりの転職希望者は前の会社でリストラされた人たちだ。自分から進んで新しいキャリアに挑戦する人材はまれである。

新卒市場は違う。数十万人の学生が一斉に就職活動をするので、中小企業であっても優秀学生にめぐり合うチャンスがある。そして、今年はとくに大きなチャンスである。
ほとんどの学生はまず知名度の高い大企業を志望するが、今年のようにシューカツ意識が異様に高いと企業側が困る。たくさんの問い合わせに対応できなくなるからだ。「すべての学生に対して平等にすべきだが、全員に入社案内を送付し、セミナーに来られるようにするのは予算的にも人員的にも無理。足切りせざるを得ない」という採用担当者の声も聞く。かなり多くの学生が大企業を早期にあきらめ、ターゲットを中小企業に切り替えるだろう。

学生は社会経験がなく、多くは無垢である。損得勘定でなく、採用する側の情熱によって入社を決める学生はかなり多い。特に最近の学生は素直であり、この連載で紹介してきた採用手法を着実に実行すれば、その企業に合った優秀学生を採用することは可能だ。
わたしの知っている中小企業(社員10名程度)の中にも、驚くほどレベルの高い学生を採用している企業はたくさんある。

優秀学生の採用で気をつけてもらいたいのは、採用後の使い方だ。自社の人材よりレベルが極端に高い学生を採用して放置すると、周りのレベルの低さに失望して辞めるか、低いレベルに合わせて能力を発揮しないかのどちらかになる。こういう失敗を人事の世界では「ミスマッチ採用」と呼んでいる。
せっかく苦労して採用したのに、企業と新入社員の相性が悪く、損失になってしまうのがミスマッチ採用だ。優秀人材を活かせる場を用意できないのであれば、無理をして新卒採用をすべきではない。

「ミスマッチ採用」にならないための条件
1 人材を生かせる場があるか
2 人材育成力を持っているのか

記載された情報は一般的な情報であり、実際にご活用される場合には、別途専門家とお打合せ下さい。