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消費者トレンドvol.32

先端ブームをウォッチする 第6回 職場や地域に《運動会》が復活!〜経費削減の最中、なぜ増えるのか?〜 社内活性化の切り札として見直される効能

マーケティングコンサルタント 西川りゅうじん

兵庫県出身。一橋大学卒業。実践的コンサルティングには長きにわたり定評がある。愛・地球博の“モリゾーとキッコロ”や平城遷都1300年の“せんとくん”の審査・PR、「表参道ヒルズ」の企画立案、「つくばエクスプレス」沿線PR、「成田新高速鉄道」沿線まちづくり、鹿児島県産焼酎のブランド化等に携わる。2010年放送のNHK大河ドラマ「龍馬伝」を契機とする高知県「土佐・龍馬であい博」総合プロデューサー。

天高く馬肥ゆる秋。スポーツに絶好の季節がやってきた。運動会で子どもたちの歓声がこだまする。一世代前は、秋になれば、学校だけではなく、企業や役所などの職場でも、チームワークの醸成や社員のレクリエーションのために社内運動会を催していた。また、商店街や町内会などの地域ごとでも開催していた。ところが、昭和から平成になった頃から、年功序列・終身雇用といった日本的経営の崩壊とともに、運動会は急速に姿を消してしまった。

しかし、ここ数年、日本の秋の風物詩ともいえる、職場や地域の運動会が復活してきている。今回は、運動会が復活してきた理由と効能を明らかにしたい。果たして、運動会で職場の〈運〉は良い方に動くのか?

「日本的経営」の象徴として消えていった〈運動会〉が増加?

景気後退によって、どこの企業も経費削減を余儀なくされ、実業団スポーツの廃部はもとより、歓送迎会などの企業内催事も規模を縮小するところが増えている。
しかし、そんな中で逆に増えている催事がある。驚くなかれ、職場の〈運動会〉だ。一世代前はどこの会社でも運動会やスポーツ大会を催していた。それが1980年代に入った頃から、「日本企業は一人ひとりの個性が伸ばせないため創造性に欠ける」などと言われ、社員が全員参加する運動会や社員旅行は旧態依然とした悪弊の代表として忌み嫌われ、消えて行った。

80年代後半からバブル経済に突入すると、空前の好景気で新卒の確保が難しくなった。せっかく採用した新入社員も、少し気に入らないことがあると簡単に辞めてしまう状態だった。戦後の日本社会の功罪の〈罪〉の部分がクローズアップされ、新人類世代には従来型の〈縦社会〉を脱することこそが正義だと思われた。日本社会に個人主義が広がる中で、社内の運動会は高度成長期の遺物として、まるで明治維新になってチョンマゲを切るようにどんどん廃止されていった。

そして、90年代に入り、バブルが崩壊すると、アメリカ式の〈グローバルスタンダード〉がすべて是とされた。企業は社員のものではなく、株主のものであり、チームワークよりも一人一人の労働生産性の向上を求めるようになった。低成長下で定期昇給が難しくなり、転職が当たり前となって退職金制度を廃止する会社も増えた。経費削減のために正社員を減らして派遣社員やパートやアルバイトが増加した。

A rolling stone gathers no moss.」(転がる石に苔は付かない)という諺が、もともと英国では「転がってばかりいては苔も付かない」という意味だったが、アメリカでは「常に転がっていないと苔が生えて古びてしまう」という意味に変わった。
それと同様に、日本でも、旧来のヨーロッパ型からアメリカ型に転換して、雇用の流動性を高めようという風潮が高まり、労働に対する意識が変化していった。社員の会社に対する忠誠心や帰属意識は低下し、戦後の「日本的経営」の成功モデルの根幹を成した「年功序列」「終身雇用」は静かに息を引き取った。

米国モデル崩壊で時代が一巡し、〈運動会〉が見直される

※写真はイメージです。

しかし、サブプライム問題、リーマンショック以降のアメリカ発の経済危機で状況は一変した。お手本としていたアメリカ型の新自由主義が崩壊してしまったのだ。そして、日本的経営の良さ、戦後の日本社会の功罪の〈功〉の部分が見直されてきたのだ。

また、古くから「沈黙は金なり」「以心伝心」を美徳としてきた日本人は、元来、組織内においてあまり自己主張をせず、相対的に対面の言語によるコミュニケーション能力が高いと言えない。
30代以下の多くの人は、核家族の夫婦共働きの家庭で育った一人っ子で、家庭内でのコミュニケーションも少ない環境で育っている。学校でも、同級生との横の付き合いがほとんどだ。一部の体育会系のクラブなどに属した経験のある人を除けば、年齢や立場が異なる年長者や年少者との、縦関係のコミュニケーションの経験が薄い。だから、なおさら腹を割って話せるようになるまで、同じ時間と空間の共有が必要になる。

会社も少し規模が大きくなると縦割りの弊害で他部門とのつながりが希薄になり、同じ社内で名刺交換をしなければならなくなる。
社員による情報漏洩が社会問題化しているが、こうした事件は守秘義務契約だけでは防ぎようもない。結局は社内のムードを改善し、社員同士がお互いの変化に気付くよう心掛けるより他に方法はない。
こうして時代が一巡して、社内のチームワーク、社員の会社に対する帰属意識や忠誠心を醸成することの重要性が再び見直されてきたのだ。そのための有効な手段として運動会が急浮上してきたのである。企業の運動会は、社内活性化策の周回遅れのトップランナーとなったのだ。

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