SMBCコンサルティング視野が広がると、ビジネスは拡がる

TOP > ビジネスプレス> 経営サポートガイド> 経済情報トップ

時流ガイドNew!

経済情報vol.19

今の経済をキャッチする 第6回 環境対策と日本経済 温暖化ガスを2020年までに1990年比25%削減するという政策の行方

町田 顯

1935年生。早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券に入社。1972年より1987年までオーストラリア、香港、オランダ、中国など海外店に勤務。関連会社役員を経て、1996年より大和総研顧問として東ヨーロッパ、中央アジアの市場経済化のコンサルタント活動に従事。日本大学講師。著書は『初心者のための「日経新聞」の読み方』『拡大EU』など。

民主党新政権が掲げる政策のうち、産業界と私たちの暮らしにもっとも大きな影響を与えそうなのは「温暖化ガス1990年比温暖化ガス25%削減」だ。2020年までにこの数値目標を達成しようというのだ。この意欲的な温暖化ガス削減計画は、2009年9月22日に開かれた国連の気候変動サミットで鳩山首相が表明演説し、世界各国から称賛された。

2020年という期限まで約10年。目標に近づくためには、電力、製造、輸送などの産業はもとより、店舗の冷暖房と照明の効率化や、各家庭の省エネ化などの施策を急いで推し進める必要がある。産業構造も変わるだろう。現時点で具体的な政策については不明だが、経済構造にも大きな影響があるだろう。

2020年までに25%減(1990年比)という高いCO2削減目標

2009年9月に民主党新政権が発足し、主要政策の1つとして温暖化ガスの削減が上げられている。民主党は衆議院選のマニフェストに「CO2等排出量について、2020年までに25%減(1990年比)、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。」と宣言し、新政権はどうやら本気でその数値目標を実現しようとしているようだ。
マニフェストの削減目標は海外でも大きく取り上げられ、衆議院選挙での民主党優勢の報道によって、ロンドンの欧州気候取引所のCO2排出枠の価格は10営業日連続で史上最高値を更新し、1カ月で4倍以上に暴騰した(出典:週刊朝日9月18日号「民主党政権1年後の日本」)。
その理由は、25%削減の目標を達成する手段の1つに「排出枠」の取引があり、枠の余った会社と不足している会社で売買できる仕組みになっていることだ。市場は、日本の大企業が「排出枠」を買ってくると読み、排出枠価格が暴騰したのである。

もちろん自民党前政権も温暖化ガスの削減には取り組んでいた。2009年6月に「2005年比15%減(1990年比8%減)」という政府方針を表明しているが、新政権の「1990年比25%減」はその3倍という高いハードルである。

民主党新政権はこの目標を実現するための仕組みとして、石油、石炭などの化石燃料の利用に課税して、CO2の排出を抑える「地球温暖化対策税」(環境税)を想定しており、温暖化ガスの国内排出量取引制度とあわせて2011年度には導入したいと表明している。

[拡大図はこちら]

出典:国立環境研究所温室効ガスインベントリオフィス
新しいウィンドウを開きます http://www-gio.nies.go.jp/index-j.html
温室効果ガスインベントリオフィス 「日本の1990〜2007年度の温室効果ガス排出量データ」(2009.4.30発表)

25%削減は国際的枠組みで実現すると言っていることに注意

温暖化ガス1990年比25%削減という政権公約にはいくつかの前提が掲げられている。鳩山首相の発言から、下記に要旨を抜粋する。

  1. 1. 世界の全主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みを構築する。
  2. 2. 全主要国の参加による意欲的な目標の合意が、日本の約束の前提となる。
  3. 3. 意欲的に排出量削減に努める途上国に、先進国は資金、技術支援を実施すべきである。
  4. 4. 途上国支援の具体策を「鳩山イニシアチブ」として新内閣発足後直ちに検討する。
  5. 5. 9月22日の国連気候サミットに出席して「国連気候変動ハイレベル会合」の開会式で演説し、この25%のCO2削減の地球温暖化対策を世界に発信する。

5については、鳩山首相の演説は好評で、新政権を注視する各国首脳に強い印象を与えたと報じられた。
ただし、数値目標は数字が一人歩きしがちなものだ。「25%削減」だけが日本の国際公約ではなく、世界各国との合意と連携による国際枠組みによって実現しようとしていることに注意したい。

記載された情報は一般的な情報であり、実際にご活用される場合には、別途専門家とお打合せ下さい。