二宮尊徳を知らないビジネスパーソンはいないと思います。その一方で、彼が今でいうところの「経営者」であり「事業家」の顔を持っていたことは、あまり知られてはいないようです。
二宮尊徳が荒廃した農村の復興を手がけ、見事成功させた記録が伝記などに残されていますが、それらによると、かなり敏腕な経営者だったようです。
ところで、二宮尊徳が残した言葉には、「道徳は実利に結びつく」や「経済的な利益と道徳は不可分」など、経済に関するものがありますが、特に私の印象に残っているのは、『道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である』という言葉です。
企業には自らの繁栄のみを追求するだけでなく、継続して社会に貢献する役割があり、そのためには「道徳」の道を外れてはならない。もし道を外れたならば、それは法を犯すことに匹敵する。その一方で、いくら事業が社会に貢献していても、そこで収益が上がっていなければ、働く人もやり甲斐を感じることができず、企業そのものが継続しない……。私は、この言葉をこのように解釈しています。近年、食品偽装問題の事件が相次ぎましたが、これらはまさに「道徳なき経済」であり、事実犯罪でした。
先の言葉を紹介したのは、「道徳」の部分を「地球環境保全」に置き換えてみてほしかったからです。置き換えるとこうなります。
『地球環境保全なき経済は犯罪であり、経済なき地球環境保全は寝言である』
いかがですか? 私自身、この置き換えをしてみたとき、現在の我々に突きつけられているのは、この言葉なのだと思いました。そして、地球温暖化が進む現代において、地球環境保全は道徳であることと、環境経営が目指すべき終着駅が「経済と地球環境保全の両立」であることを改めて感じました。
こうした視点から、昨年12月にデンマークの首都コペンハーゲンで開催されたCOP15(気候変動枠組み第15回締約国会議)を振り返ってみると、地球環境保全という道徳について世界各国が一堂に会して話し合っているとも考えられ、あの会議の持つ意義がいかに大きいかがわかります。と同時に、会議があのようなかたちで幕を閉じたことで、世界規模での「経済と地球環境保全の両立」には、まだまだ時間が必要だということもわかりましたが……。
同じく、昨年12月に第6回エコプロダクツ大賞の表彰式が東京で開かれました。これは環境負荷の低減に配慮した優れた製品やサービスを表彰することで、それらのエコプロダクツを通じて消費者へ地球環境保全の意識を広めていこうとするものです。
この表彰式に出席して印象に残ったのは、表彰されたエコプロダクツをはじめ、出品・展示された多くのものが大企業による製品やサービスだったことです。COP15にせよ、エコプロダクツ大賞にせよ、国や大企業が牽引役となって地球環境保全を考え、取り組んでいることは素晴らしいことだと思います。しかし、その一方で日本における地球環境保全の本当の主役は、中小企業であるべきだとも感じました。なぜなら、日本の温室効果ガス排出量を本当に削減しようとするならば、企業全体のほとんどを占める中小企業が主役となって取り組むことほど、効果的なことはないからです。
しかし、現状では中小企業の地球環境保全への取り組みを支援、促進するような国の働きかけも少なく、取り組んでいる企業があっても、そこにスポットが当てられることはほとんどありません。先の言葉で示したように、地球環境保全と経済を切り離して考えることができない現代だからこそ、中小企業が果たす役割とその影響力は大きいはずなのです。
こうしたことも、「道徳」を「地球環境保全」という言葉に置き換えたことで見えてくるのです。
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