自分一人でできることには限りがある。自分の目となり耳となり、考え、動いてくれる「右腕」が、社長にはどうしても必要だ。
特に後継者にとって、自分の社長就任を全社員が歓迎しているとは限らない状況のなかで、自らの考えに共感してくれ、味方になってくれる右腕は、かけがえのない存在になる。
右腕となる人材を確保することは簡単ではない。社長が心から信頼できる人間を探そうというのだから、当然のことである。しかし、だからこそ「自分の右腕は自分で見つける」という気概を持ってほしい。当然ながら、自分が信じる社員を、他の誰かが見つけてくれることはない。
ちなみに、私が父の会社を継いだときに右腕となってもらったのは、レコード会社で営業マンをしていた時に出会った得意先のお店の店長である。非常に優秀で、何よりも自分が心から信頼できると確信した人物だったため、まさに三顧の礼のごとく口説いて来てもらった。私よりも1歳年上だったが、会社を整理する最後の最後まできちんと働いてくれた。彼がいなければ、二代目社長を16年間も続けることはできなかっただろう。
では、どうやって自分の右腕を探せばいいのだろうか?
右腕は、いわば最高幹部であるから、誰でもよいというわけにはいかない。そのため、まずは自分の人脈を広げて、知り合いに相談することから始めるのがお勧めだ。そこで紹介してもらうことができれば、その人物はある程度評価されていると判断でき、実際に会ってみる価値が高いと考えられる。
右腕を見つけるうえで大切なのは、実際に会って自分の目で確かめることだ。どんなに評判がよくても、それが本当なのかを確かめる必要がある。それと同時に、自分との相性も確認しなければならない。いずれにせよ、会って話さなければわからないことは多い。ここの労力を惜しんでいては、右腕を見つけることは難しい。
候補者と会って話をするときに注意したいのは、通常の採用面接のような質疑応答にならないようにすること。会社や経営に対する価値観だけでなく、家族について、趣味や嗜好、そして休日の過ごし方など、プライベートな部分にまで踏み込んだ質問をして、できるだけ人間性を引き出したい。
社長は公私の別なく会社経営について、常に考え行動しなければならない。その伴走者である右腕と、さまざまな面で価値観が一致していることは、非常に重要なことである。じっくりと時間をかけてコミュニケーションをとり、仕事面だけでなく、人間的な面においても、自分の価値観とどのくらい合致しているかを確認することを忘れてはならない。