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ものづくりvol.8

創意工夫の工場現場レポート 第8回 ワールドビジネスサテライトで紹介された「世界一細い線」 他の追随を許さない5ナノの線を描く電子ビーム描画装置

政策研究大学院教授 橋本 久義

東京大学工学部精密機械工学科卒業後、通商産業省(以下「通産省」という、現・経済産業省)入省。独デュッセルドルフ駐在などを経て、通産省機械情報産業局鋳鍛造課長、中小企業庁技術課長などを歴任。1997年より政策研究大学院大学で教鞭をとる。通産省時代から「現場に近いところで行政を」をモットーに、全国数多くの工場・中小企業の現場を訪れて、技術者・経営者の意見を聞いてきた。著書に『町工場が滅びれば日本が滅びる』など。

「ワールドビジネスサテライト」は小谷真生子さんがキャスターをつとめる経済報道番組だ。この番組を見てから寝るというビジネスマンは多い。2009年6月1日の「技あり! ニッポンの底力」というコーナーで「世界一細い線」を描く装置を開発したメーカーとして株式会社エリオニクスが紹介された。

放送では番組のロゴを描いた。その文字の太さは50ナノメートル。1ミリの2万分の1だが、実はもっと細い5ナノメートル(1ミリの20万分の1)まで描ける。世界でもっとも細い線だ。描画で活躍するのはエリオニクスの電子ビーム描画装置。2万もの部品を使う精密な加工装置だ。この技術が日本のナノテク(ナノ・テクノロジー)を支えている。

テレビのブラウン管で活躍している電子ビーム

「電子ビーム」というと言葉だけで引いてしまう人もいるだろう。しかし電子ビームを利用した製品は身の回りに溢れている。ついこの間まで茶の間の主役だったブラウン管テレビ。ブラウン管の奥に電子銃があり、電子ビームを発射する。そして画面の裏側の蛍光体を光らせて画像を表示する。電子銃から発射される電子ビームは、一本でブラウン管全体をくまなく走り回り、その繰り返しで画像が変化していく。全体を走り回ることを「走査」という。

ブラウン管の原理と似た製品は2つある。1つが走査型電子顕微鏡、もう1つが電子ビーム描画装置だ。顕微鏡は物質の観察、描画装置は物質の加工と目的は異なるが、電子ビームを発射し、対象物質の表面を走査していく点では一致する。

創業メンバーは全員が電子ビームのエキスパート

電子ビーム描画装置の原理を説明する本目社長

ワールドビジネスサテライトで紹介されたエリオニクスの創業は1975年。1973年末から始まった第一次オイルショックによる経済不況のころだ。創業メンバー全員が電子顕微鏡で有名な日本電子株式会社に勤務する電子ビームのエキスパートたちだった。電子ビームには顕微鏡以外にも加工という応用分野があるが、日本電子では思い切った開発ができない。そこで技術ベンチャーとしてエリオニクスを創業したのだ。
エリオニクス「ELIONIX」は、ELECTRON、ION、X-RAYに由来しており、電子ビーム、イオンビーム、X線という技術すべてを使った新しいテクノロジーを樹立したいという思いを反映した命名だった。

現社長の本目精吾さんも創業メンバーの一人であり、誘われて創業に参加した。日本電子も快く創業を認めてくれた。研究機器を安く融通してくれ、研究開発体制の立ち上げに協力してくれた。
「日本電子の出身者」という肩書きも役立った。「取引先や金融機関、下請企業からすぐに信用が得られた」と本目社長は当時を述懐する。

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