「ワールドビジネスサテライト」は小谷真生子さんがキャスターをつとめる経済報道番組だ。この番組を見てから寝るというビジネスマンは多い。2009年6月1日の「技あり! ニッポンの底力」というコーナーで「世界一細い線」を描く装置を開発したメーカーとして株式会社エリオニクスが紹介された。
放送では番組のロゴを描いた。その文字の太さは50ナノメートル。1ミリの2万分の1だが、実はもっと細い5ナノメートル(1ミリの20万分の1)まで描ける。世界でもっとも細い線だ。描画で活躍するのはエリオニクスの電子ビーム描画装置。2万もの部品を使う精密な加工装置だ。この技術が日本のナノテク(ナノ・テクノロジー)を支えている。
「電子ビーム」というと言葉だけで引いてしまう人もいるだろう。しかし電子ビームを利用した製品は身の回りに溢れている。ついこの間まで茶の間の主役だったブラウン管テレビ。ブラウン管の奥に電子銃があり、電子ビームを発射する。そして画面の裏側の蛍光体を光らせて画像を表示する。電子銃から発射される電子ビームは、一本でブラウン管全体をくまなく走り回り、その繰り返しで画像が変化していく。全体を走り回ることを「走査」という。
ブラウン管の原理と似た製品は2つある。1つが走査型電子顕微鏡、もう1つが電子ビーム描画装置だ。顕微鏡は物質の観察、描画装置は物質の加工と目的は異なるが、電子ビームを発射し、対象物質の表面を走査していく点では一致する。
電子ビーム描画装置の原理を説明する本目社長
ワールドビジネスサテライトで紹介されたエリオニクスの創業は1975年。1973年末から始まった第一次オイルショックによる経済不況のころだ。創業メンバー全員が電子顕微鏡で有名な日本電子株式会社に勤務する電子ビームのエキスパートたちだった。電子ビームには顕微鏡以外にも加工という応用分野があるが、日本電子では思い切った開発ができない。そこで技術ベンチャーとしてエリオニクスを創業したのだ。
エリオニクス「ELIONIX」は、ELECTRON、ION、X-RAYに由来しており、電子ビーム、イオンビーム、X線という技術すべてを使った新しいテクノロジーを樹立したいという思いを反映した命名だった。
現社長の本目精吾さんも創業メンバーの一人であり、誘われて創業に参加した。日本電子も快く創業を認めてくれた。研究機器を安く融通してくれ、研究開発体制の立ち上げに協力してくれた。
「日本電子の出身者」という肩書きも役立った。「取引先や金融機関、下請企業からすぐに信用が得られた」と本目社長は当時を述懐する。
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