【Q】退職金制度を改定したいが?
実情に合わなくなった退職金制度を改定したいのですが、不利益変更にならないかなど、法的な面がよくわかりません。今後あるべき退職金制度の方向性と合わせて教えてください。
【A】退職金制度を作ったら、簡単に廃止または変更することはできません
合理的な理由が認められれば、不利益に変更できることも
退職金は、就業規則の一部であり、就業規則上は相対的必要記載事項(定めがある場合に定めなければならない事項)です。定めがないのであれば定めなくてもいいものだから、制度を廃止してしまえば問題ないのでは?と思うかもしれませんが、一度退職金制度を作ったら、簡単に廃止または変更することはできません。
就業規則の変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則としてできないのですが、合理的な理由がある限り、不利益に変更することも可能であるという最高裁の判決があります。合理的理由は、個々のケースごとに判断していかなければならなく、単に経営不振だからという理由だけではなりません。既得権は保証されているか、代償措置を講じているのか、不利益を是認させるだけの特別の事情があったか、労働組合などとの交渉をどの程度経ているか、といった判例上の解釈がなされています。
見直しは必須の時期だが、企業に欠かせない制度
従来の退職金制度は、「基本給連動型」が主流でした。そして税制適格年金や厚生年金基金といった企業年金制度を活用して退職金の保全措置を講じてきました。しかし、最近の長引く低金利時代を反映してか、企業年金に関して様々な法改正が行われており、新しい流れとして、401k(確定拠出型企業年金)といったものも現れ、また退職給付債務を背負わない制度として前払い退職金制度を構築する企業も見受けられるようになりました。
2012年(平成24年)には、税制適格年金の廃止が決定しています。代行部分を国に返上する厚生年金基金も多く、それら企業年金をはじめ、退職金や退職年金制度に関する考え方は、まだまだ変わる余地があり、ここで見直しをしなければならない企業は多数に上ると思われます。
会社にとって、退職金の発生が準備なく訪れたら、確かに脅威です。ただ、退職給付債務を背負わないということだけをもって、退職金制度を廃止または変更するのには疑問を感じることがあります。企業も生き物であり、だからこそ退職金の積み立て方を工夫して、退職金制度は存続させるべきだと思います。それは、少子高齢化にともなう年金問題にもあてはまります。労働者には常に老後の不安があり、会社にとっても永年勤続を奨励する企業体質がある限り、なくてはならない制度だと思います。
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社会保険労務士 朝比奈睦明(2005年9月更新)
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