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SMBCマネジメント+(プラス)

伊藤 元重 氏

近視眼的な悲観に流されるな

企業の収益は史上最高となっている。企業の手元には潤沢すぎるほどの資金が貯まっている。金融機関や市場からの資金調達でも、その調達コストは史上最低の金利の恩恵を受けている。それでも多くの企業は投資や賃上げなどのキャッシュアウトに慎重だ。だから、企業の手元にはさらに資金が滞留していくことになる。

なぜもっと投資しないのか。そのような質問を企業のトップに投げかけると、「今は少し景気が良くなったように見えるが、この先のことを考えると慎重にならざるをえない」、というような答えが返ってくる。まるで、景気回復は一時的なものであり、日本経済の将来展望は非常に暗い、と言っているようだ。中には、「景気は東京オリンピックまでで、そのあとの見通しは暗い」と発言する人も多い。

本当にそうなのだろうか。2020年以降の日本経済がオリンピックのような一過性のイベントだけで決まるとは考えられない。高齢化がさらに進むという問題はあるが、人口構造だけで経済の展開が決まるというのもあまりにも単純な議論だ。私たちはどうしても目の前に見えることで、将来のことを想像してしまう。要するに近視眼的になる傾向がある。

企業経営者に求められることは、より長期的な視野ではないだろうか。2020年までではなく、これから10年あるいは20年先を見通した時、何が経済の変化の原動力になるのか。こうしたビジョンを持つことが必要なはずだ。長期的な視野をしっかり持てば、そこにビジネスチャンスを見つけることもできるだろう。

急速に社会を変えようとしている技術革新、これから15年間で15億人の中間所得・富裕層が生まれると推計されているアジアの需要の拡大、環境問題で問われる技術力や対応力など、企業や社会を大きく変える要因がいくつかある。こうした変化がビジネス環境をどう変えるのか、企業経営者の眼力が求められる。



※本原稿は「SMBCマネジメント+(プラス)」2018年4月号(4月1日発行)に掲載されたものです。


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マネプラ・オピニオンについて

ビジネス情報誌「SMBCマネジメント+(プラス)」にて、下記の6名の識者の方々が、自身の視点でまとめた経営者へのメッセージを巻頭コラム「マネプラ・オピニオン」として連載しています。

【執筆者一覧】 2017年4月号~

  • 伊藤 元重 氏(東京大学 名誉教授、学習院大学国際社会科学部 教授)
  • 近藤 誠一 氏(近藤文化・外交研究所 代表、元文化庁長官)
  • 梅澤 高明 氏(A.T.カーニー 日本法人会長)
  • 藤原 帰一 氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
  • 坂東 眞理子 氏(昭和女子大学 理事長、総長)
  • 三品 和広 氏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

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