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SMBCマネジメント+(プラス)

坂東眞理子 氏

オーストラリアの年金制度

高齢社会政策というと北欧のような高福祉・高負担か、アメリカのような低福祉・自主努力型か、と議論になるが、自助努力を促しつつ政府も関与するというオーストラリアの中福祉・中負担も参考になる。

オーストラリアの福祉サービスは高齢者を中心とするボランティアが話し相手や外出補助など広い範囲の福祉活動にかかわり、専門性の高いサービスは有給の職員が担い、そのマネージメントが効率的に行われていて魅力的だが、ここで紹介したいのは年金システムである。

オーストラリアの公的年金は2階建てである。1階は税金を原資とするage pension(老齢年金)で、保険料の負担はないが資産調査があり所得保障という色彩が強い。ユニークなのは2階にあたる雇用主の強制拠出と被用者や自営業者の任意拠出によるスーパーアニュエーションで、労使の拠出金に対しては税控除が行われ補助金もでる。事業主拠出は給与の9%、個人はそれに上乗せとして任意の積み立てをする。運用は企業ファンド、産業分野別ファンドのほか、金融機関の提供するリテールファンドなどが担う。いろいろな種類があり、運用成績もマイナスから2桁までかなり差が大きい。ファンドは被用者が指定し、毎年変更することができる。政府は適正にファンドが運用されているか監督するだけである。55歳の保全年齢までは引き出すことができないが、65歳になると年金や一時金として引き出すことができる。

この強制貯蓄自体なかなかユニークだが、注目してほしいのは将来の高齢者の増大を見据えしっかり対策を講じていることである。老齢年金は支給開始が65歳だったが、2017年から段階的に引き上げられて67歳になり、繰下げ受給の促進などで就労を促進する。スーパーアニュエーションの雇用主の強制拠出は12%に上げられ、保全年齢の引き上げ、一時金でなく年金での受給を促進しようとしている。長寿国日本が高福祉・低負担の社会保障を続けているのと対照的である。



※本原稿は「SMBCマネジメント+(プラス)」2018年2月号(2月1日発行)に掲載されたものです。


マネプラ・オピニオンについて

ビジネス情報誌「SMBCマネジメント+(プラス)」にて、下記の6名の識者の方々が、自身の視点でまとめた経営者へのメッセージを巻頭コラム「マネプラ・オピニオン」として連載しています。

【執筆者一覧】 2017年4月号~

  • 伊藤 元重 氏(東京大学 名誉教授、学習院大学国際社会科学部 教授)
  • 近藤 誠一 氏(近藤文化・外交研究所 代表、元文化庁長官)
  • 梅澤 高明 氏(A.T.カーニー 日本法人会長)
  • 藤原 帰一 氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
  • 坂東 眞理子 氏(昭和女子大学 理事長、総長)
  • 三品 和広 氏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

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