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SMBCマネジメント+(プラス)

近藤誠一 氏

民主主義vs.ポピュリズム

欧州で、そして米国でポピュリズムが台頭している。民主主義の退潮と言われる。しかし民主主義もポピュリズムも、選挙を軸として市民が政治に参加するという点では全く同じだ。では何が違うのか。どこまでが民主主義で、どこからがポピュリズムなのか。

これを測る三つの基準がある。民主主義は市民が(イ)国全体のあり方を長期的に考え、(ロ)それに必要な一定の知識をもち、(ハ)それを理性的に行使するときに本来の機能を発揮する。目先のひとつのイシューのみに関心をもち、浅薄な知識で判断し、それを感情的に投票行動に移すとき、ポピュリズムが生まれる。

今の欧米に共通しているのは、経済格差の拡大と大量の移民流入への不安感だ。まじめに働いても暮らしは楽にならぬ一方で、大量の移民に職を奪われているという不満が、反移民というシングル・イシューとなった。安全保障やマクロ経済、温暖化などに関する知識も問題意識もなく、従ってそれらについての候補者の政策に関心をもたず、ただ目の敵である移民を追放してくれる選択肢を、大衆がこぞって選択した。

この奥には、グローバル化を生き残るためとしてエリートたちが説いてきた、自由競争や構造改革、リベラルな人権尊重などの合理的な理屈があまりに杓子定規に押し付けられてきたことへの大衆の反感がある。民主主義の理念や制度そのものに欠陥があるのではなく、競争についていけない大衆が、この制度はエリートを潤すだけで自分たち大衆との格差は拡大するばかりだ、“きれいごと”はもう沢山だという不満を蓄積させ、ついに爆発したのだ。人間は感情の動物であり、常に合理的に行動できる訳ではない。

振り子が、行き過ぎた合理主義から戻りつつあるのだとすれば、それが勢いを増して振れ過ぎないうちに、健全なバランスに落ち着かせる努力をしなければならない。それは政治家だけでなく、あらゆる層の心あるひとたちの役割である。


※本原稿は「SMBCマネジメント+(プラス)」2017年5月号(5月1日発行)に掲載されたものです。

マネプラ・オピニオンについて

ビジネス情報誌「SMBCマネジメント+(プラス)」にて、下記の6名の識者の方々が、自身の視点でまとめた経営者へのメッセージを巻頭コラム「マネプラ・オピニオン」として連載しています。

【執筆者一覧】 2017年4月号~

  • 伊藤 元重 氏(東京大学 名誉教授、学習院大学国際社会科学部 教授)
  • 近藤 誠一 氏(近藤文化・外交研究所 代表、元文化庁長官)
  • 梅澤 高明 氏(A.T.カーニー 日本法人会長)
  • 藤原 帰一 氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
  • 坂東 眞理子 氏(昭和女子大学 理事長、総長)
  • 三品 和広 氏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

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