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SMBCマネジメント+(プラス)

大隅 良典 氏

コロナ禍に思う

最近様々な分野で国際的な活躍をする若者が出てきたことは素晴らしいが、まだ日本の社会では出来るだけ人と違わず目立たないことが大事にされる傾向がある。一方、海外では他人と違うことが評価のポイントとなる。私が身を置く科学の世界で考えると、多くの関心を集める流行のことを対象に選べば、競争が激しく誰が一番乗りになるかが最大の問題となる。その一方では、まだ注目されていない課題であれば、得られる結果は全て新しい。未だ誰も答えを持っていない問いを見つけて、答えを探ることこそ研究の醍醐味である。科学や芸術では、新規性があり、いかに独創的であるかが問われる。

いま世界中が新型コロナの対応に追われている。我々のウィルスに関する知識も、感染のメカニズムの理解も甚だ不十分であることを知らされた。感染者の数に一喜一憂するのではなく、これまでも人類が経験してきた歴史に学び、長い時間軸で捉えることの重要性、科学的な考えが大切であることを教えている。

現代に生きている我々の多くは、初めてのパンデミックに遭遇し、行動の自由が制限される事態を経験している。大学生は、この半年間、登校さえ許されない状況になり、十分な議論もなく始まったオンライン授業では、一方通行の知識の伝達になり、双方向の議論から学ぶ機会を失っている。溢れる情報の中から適当な答えを探す作業ではなく、異なる立場や考え方に触れて自分で考える力こそが、これからの社会には必要である。コミュニケーション能力とは、うまく話す技術ではなく、自分が言いたいことを持つことである。

今後収束を迎えても、これまでの遅れを取り戻そうと、より窮屈な教育現場が始まりそうである。就職など将来の不安からますます内向きで、小さな世界に閉じられた「コロナ世代」ともいうべき若者達が生まれないように努力することが、現役世代の大きな責務ではないだろうか。本来挑戦は若者の特権であることを我々も肝に銘じたい。



※本原稿は「SMBCマネジメント+(プラス)」2020年10月号(10月1日発行)に掲載されたものです。


マネプラ・オピニオンについて

ビジネス情報誌「SMBCマネジメント+(プラス)」にて、下記の6名の識者の方々が、自身の視点でまとめた経営者へのメッセージを巻頭コラム「マネプラ・オピニオン」として連載しています。

【執筆者一覧】 2019年4月号~

  • 大隅 良典 氏(東京工業大学科学技術創成研究院 栄誉教授、公益財団法人大隅基礎科学創成財団 理事長)
  • 北岡 伸一 氏(東京大学 名誉教授、独立行政法人国際協力機構(JICA) 理事長)
  • 白川 方明 氏(青山学院大学国際政治経済学部 特別招聘教授)
  • 髙橋 政代 氏(株式会社ビジョンケア 代表取締役社長、理化学研究所 生命機能科学研究センター
            網膜再生医療研究開発プロジェクト 客員主管研究員)
  • 薮中 三十二 氏(立命館大学国際関係学部 客員教授)
  • 清家 篤 氏(慶應義塾 学事顧問)

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